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5月 ツツジ(躑躅) ユリノキ(百合の樹)

     ツツジ(躑躅)               ツツジ科

  ゴールデン・ウィークの皇居周辺を彩ってくれる花は、何と言ってもツツジで しょう。 三宅坂の斜面では、年と共に、カラシナの黄色が優勢になってきたよう に思えますし、栽植品では、コブシ、ハナミズキ、ハナズオウ、モクレンもそれ ぞれに盛春を演出してくれますが、満開時に葉っぱの緑を覆い隠すほどになる花の 量、品種の多さ、花の色の多様さで、ツツジが最も印象的です。
 落葉性で、3月下旬、明るいピンク色の花が、葉に先だって咲くのは、ミツバ ツツジです。 名前の由来である輪生する三枚の葉は、満開になってから膨らみ 始めますから、ピンクの花が実によく目立ちます。 乾濠小公園に1基あるのに、 お気づきでしょうか。
 4月初旬から花が見られるようになるのが、オオムラサキツツジ。 大きな葉、 大きな花、周回路沿いに咲いているのは、紫紅色がほとんどですが、純白もあれば、 白にピンクの斑点、淡紅に濃い紫紅色の斑点、ピンクと白の絞りなど色の変わった のも混じっています。
 オオムラサキは、千鳥が淵公園の中、走路沿い、三宅坂、それこそ到るところに 独立樹や、刈り込みがあります。 走路沿いでは、大手門から先、車道側に、 エンジュとエンジュの間を埋めて50mほど、寄せ植えが続き、その先は、クルメ ツツジでしょうか、丈の低い、細かな葉のツツジのグラウンド・カバーの中央部に、 オオムラサキの刈り込みが配されています。 新芽を吹き始めたエンジュとエンジュ との間に満開のオオムラサキが一基という配置は、竹橋の手前まで、500m以上 にわたって続きます。
 竹橋から先では、エンジュからサクラの並木に代わります。 ここから内堀通り に出る切り通しまで、平成になって間もなく特殊舗装が施された際、グラウンド・ カバーが、(クルメ?)ツツジに統一されました。 乾門から先は、走路の車道側、 空濠側の両方に、ツツジの列が続きます(開花は、5月後半)。
 なお、三宅坂には、様々な品種、色取りどりのツツジの刈り込みがあるのですが、 最近の強剪定で、球形の上半分がバッサリ切り落とされている株が多く、今年だけ、 満開のツツジを鑑賞する楽しみが、半減しそうです。 走路から桜田濠の景観を 見渡し易くするために、数年に一度は、我慢も仕方無いのでしょうね。

 植物学の専門書によると、ツツジ科に分類される植物は、スノキ亜科、ツツジ 亜科、エリカ亜科に大別され、合わせて100以上の「属」があり、全部で 3000以上の「種」に分かれる多様な植物群だそうです。 私達が普通、ツツジ と呼んでいる花木は、ツツジ亜科ツツジ属ツツジ亜属ツツジ節に含まれます。
 ツツジ属は、850種にも分類される大所帯で、広く採用されている分類方法 に従うと、ミツバツツジは、ツツジ属ツツジ亜属ミツバツツジ節に分類され、 シャクナゲは、ツツジ属シャクナゲ亜属に入ります。
 ツツジは、「花が群がって咲くさま」「花が咲き続けるさま」を意味する言葉だ そうで、「筒咲き」から転訛したとも言われます。
 それにしても、躑躅という漢字、手に負えぬ難しさですね。
 ツツジは、「万葉集」にも詠まれており、時代が下って藤原定家の「明月記」 (鎌倉時代初期)には、庭のツツジを鑑賞していたことを窺わせる記述があるのだ そうです。
 江戸時代に入ってから、熱心な品種改良が行われるようになり、多様な園芸品種 が作出されました。 園芸植物としてのツツジは、「皐月(さつき)」「久留米」 「平戸」「深山霧島」「江戸霧島」「大霧島」「琉球」「大山」といった系統に 分けられていますが、平戸ツツジに200、久留米ツツジに300を超える品種が あると言われます。

 その他のツツジ科の植物

   ドウダンツツジ(エリカ亜科) 乾濠小公園の中、走路のお濠側の生け垣に
     使われています。 漢字では、「灯台躑躅」で、枝の分かれ方からの
     命名ですが、4〜5月、7〜5ミリ、壷型の白い花の咲く様子から、
     現在では、「満天星躑躅」と書かれます。
   アシビ、アセビ(エリカ亜科) 三宅坂に多数の刈り込みがあります。
     「馬酔木」の名の通り、草食獣にとっては、有毒です。 花のつき方
     (花序)は異なりますが、4月になると、ドウダンと似た壷型の白い花
     が、咲きます。
   シャクナゲ(ツツジ亜科 ツツジ属 シャクナゲ亜属) 乾濠小公園の中、
     走路の、お濠と反対側(時計と逆周りで右側)沿いに数株、代官町
     料金所の裏手に数株あります。 前者は4月初旬に、後者は5月後半に
     咲きますので、別品種なのでしょう。
      いずれも在来種でなく、セイヨウシャクナゲと言われる欧米由来の
     品種と思われます。

               ’82年4月入会   佐々 幸夫(68)

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