小江戸大江戸233km参戦記
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2019年2月23日-24日
  千代田走友会 大竹 祐人 ゼッケン55
〇スタート前
2月23日〜24日にかけて小江戸大江戸233kmに参戦してきました。この大会は、小江戸大江戸233km, 204km, 小江戸91km, 大江戸113kmと4種類あり。3年前に204qの部に初参戦するも144q地点(こあしす)にて無念の負傷リタイア。原因は序盤スピードを出し過ぎたことによる左足の肉離れ。悔しくて悔しくて泣きながらスタート地点に荷物を取りに戻った。あれから3年、数多くのウルトラレースを完走し成長することが出来た。そして、今一度あの悔しさを晴らすために大会参加のクリック合戦へ挑み挑戦権を獲得。
蓮馨寺スタート前
一番人気が定員50人(優先枠20人、一般枠30人)の233km。前回の悔しさを晴らすためには、前回より過酷なレースを完走するのが一番!迷わず233qを選択し無事に突破することが出来た。エントリーは完了したものの、現在の走力では関門に引っかかることが判明。前半からある程度スピードが必要。出場目安は200キロ32時間以内のため、2019年は本気で走り込み脚を仕上げていった。
スタートは午前8時川越蓮馨寺スタート。少しでも体力を蓄えるために前日入りし早めの就寝をとったが、高まる鼓動・完走への不安から中々寝付けない。あらゆる安眠法を試し何とか眠りについた。当日は朝5時に起床。お風呂→ごはん→身支度→ストレッチをしながら心は落ち着いていた。スタート会場に到着するといつもウルトラレースで出会う仲間たちに会い元気をいただく。僕のウルトラ歴も8年近い、上位ランナーの半数以上は顔見知りだ。お互いレースの健闘を誓い合いスタートの合図を待った。

(1) スタート川越〜吉見(21.2km)〜手島(32.7km) 
スタートは550人余りが出走するため、毎回計測器のタッチに大渋滞が起こる。時間ロスを避けるために、ほぼ最前列の場所を確保しスタートをきった。スタートすぐに碧い彗星こと松田さんに自動追尾機能の極意を教わる。少しして超人三井田さんと島田順子さんに追いついた。三井田さんは数多くの大会を上位で入賞する超人中の超人。そこで三井田さんに「黒ゼッケンがこんなところにいるんじゃねー さっさといけ」と激をいただき猛ダッシュ。この大会での好記録は三井田さんのおかげでもあります。(笑)
天候は、雨予報だったが幸いにも晴天。しかし、前半は風速10m/s(瞬間最大風速は20m/s)ぐらいの暴風が向かい風として吹き荒れ、多くのランナーの体力を容赦なく奪い去る。それでも序盤は、身体の調子も良く脚も軽い、想定通過ペースも考えてはいたが、身体が許す限りスピードを上げていった。

(2) 手島〜寄居浄恩寺(51.5q)
   
風は一向に収まらず時々突風にあおられ、何度も帽子が飛ばされそうになった。スピードが速いせいか前後のランナーの距離が疎らになっていたが、気が付くと僕のすぐ後ろをランナーがぴったり張り付き風よけにされていた。なんか悔しくて振り切ろうと試みたが、振り切ろうにも振り切れない。それぐらい風が強かった。しばらくして河川敷の下を走る農道に出ると、風よけの木々のおかげで風が収まった。後ろに張り付いていたランナーと前後したり並走したりを続けていく。ふと彼のゼッケンを見てみると近内と書かれている。はて?どこかで見た名前だなぁと思っていたらTJAR(日本アルプスを北から南に縦断する山岳レース415km)で昨年3位にフィニッシュした近内選手と走っていることに気が付いた!!NHKの特番に出ていた伝説の選手と並走している事に驚く!!恐る恐る尋ねてみると本人だと言う!なるほど、あの強風を避けるテクニックや強靭な足腰は本人で間違いない!急に嬉しくなり僕のテンションは最高潮へ。せっかくのいい機会だったので、レース中だけどTJARの予選会の内容や本戦の事、NHKのカメラマンの事など、いろんな質問をしてみたら親切に教えてくれた。さすが山に強い男は心も優しい。僕もいつかレースに出てみたい思いが強くなった。このテンションの高さと北風のお陰で、陽射しの暑さは感じずスピードを増していった。玉掟大橋を左折すると追い風に変わり、走りやすくなった。

(3) 寄居浄恩寺〜唐子(72q)
最後のバイパス  
テンションが高いままハイペースでレースを続けていると後ろから一人の男性に声をかけられた「風が強いですねぇ」さわやかな好青年が僕に微笑みかける。たわいもない話をして並走していると名前が高橋伸幸さんであることが判明!何ということでしょう!出会った男性が24時間走日本代表の高橋さんだった。驚きを隠せない!!小江戸大江戸204km4連覇中の強者と並走しているではありませんか!!なんかおかしなことになっているぞと思いGPS時計を見てみるとあり得ないペースで激走していたことに気づく。やばい突っ込みすぎた!少し焦ったが身体の不調や痛い箇所はない。このまま川越の91km地点までは気にせず走ることに決めた。この快調をキープし小江戸ゴールの手前で近内さんを追い抜いた。

(4) 川越 (91.3km)
川越に到着すると近内さんが僕に話しかけてくれた。明日の予定に間に合わないのでここでリタイアをすると、僕に熱いエール送り固い握手で絆を深めた。いつか千代田走友会に顔を出してくれると約束してくれた。
ここはスタート地点のCPで荷物がデポしてある場所。不要な荷物を外し訪れる極寒の夜に対応する装備を詰めた。そしてカップラーメンをいただきエネルギーチャージ。残り142km夕暮れ時の川越をライト点灯し次のCPへ向けて走り出した。脚はまだ元気だ。

(5) 川越〜成願寺 (128km)
次の成願寺エイドまでは37kmの長丁場。254号は成増まで歩道も狭く、凸凹しているので慎重に進む。気が付いたらGPS時計の記録が100kmを表示していた。自分でも信じられない光景だった。今までの100キロの自己ベストが12時間14分(能登珠洲ウルトラ)で時計の表示は10時間58分を示している。これは速すぎる!でも今のところ故障はない。残り133qの完走を考えここからペースを落とすことにした。ペースを落とすものの、追い風が幸いし、前へ前へ進むことが出来た。途中の私設エイド開設情報もあったが、僕のペースが速すぎてどこも開設前。エイドで費やす時間もなくひたすら前進した。成増からは歩道も広がり街灯も明るく走りやすいものの、信号待ちが多くなった。
山手通りに入り脚が急に重くなった。原因はエネルギー補給不足による低血糖と寒さにより筋肉が固ったこと。疲労を蓄えながら成願寺エイドに到着。23日22時56分

(6) 成願寺〜こあしす (144.1km)
エイドに入ると暖房が効いていて暖かい。ここでは、河内さん特性のたこ焼きや名物の鹿肉カレーをいただき身体を温めた。古山さんや菅原さんに大森さん。名だたるエリートランナーがエイドスタッフとして迎えてくれる贅沢な空間だ。時間にゆとりはある、普段は時間がもったいないのでやらなかったが、小倉整体さんの施術を15分ほど受けることができた。何ということでしょう!脚が身体が背中が驚くほど軽くなった。ありがたい。
ここからは深夜の大都会(新宿→原宿→表参道→六本木東京タワー→皇居)を駆け抜ける。練習のナイトランで何十回と駆け抜けた場所。地図もコンビニもトイレもすべてインプット済みだ。タイムロスなくスムーズに駆け抜けた。2年前はここで肉離れを起こし脚を引きずりながら、こあしすに駆け込んだ。今年は今までの自分とは違う!強くなった自分を自覚し、テンションを上げながらこあしすに到着した。

(7) こあしす〜おしなり(156.1km)
こあしすに到着すると、たくさんのコスプレ美女(エイドスタッフ)が迎えてくれた。懇親的な対応で至れり尽くせり。ショウガタップリのにゅうめんとドリンクで元気をいただき直ぐに出発した。この後は皇居を一周しおしなりエイドを目指す。次のCPは、大谷さんと森岡さんがいる。自然と足取りが軽くなりスピードを増していった。真夜中の皇居はランナーもいなく、前後の選手も見当たらない。一番眠い時間帯だったが慣れた道、この区間はあっという間に時間が過ぎた。スカイビュー通りの終わりに人影が見えた。赤い誘導棒を振っている人がいる!大谷さんだ!!テンションが最高潮のまま、おしなりエイドに到着した。

(8) おしなり〜高島平(178.4km)
おしなりエイド 浅草寺
エイドには森岡さんもいて最高の笑顔でお迎えしてくれた。「祐人!元気そうでよかった」そう言ってもらった。なんだか実家に帰ったような安心感。ここで営業ドリンクと温かい豚汁にミニおにぎりをつっこみ食べる。そして親子3人で記念撮影。体中から元気がみなぎってきた。いつもまでも居たかったがゴールはしたい。二人に見送られ深夜の浅草寺へむけてスタートを切った。
浅草寺、鳥越神社を通過すると、前後のランナーは完全に見えなくなった。一人で走る時間が長くなる。一番眠たい時間・一番寒い時間をひたすら我慢して走り抜けた。この頃から左足首に違和感が発生。痛い!どうやら筋繊維が断裂している!時折自分でマッサージをしながら走る。疲労と眠気のピーク!蛇行しながら意識混濁しながら赤羽手前で夜が明けていった。赤羽を過ぎると自分のペースが遅くなっている。後ろから何人かに抜かれていく。
その時、エリートランナー山崎一樹さんと出会い声をかけていただいた。彼も僕と同じ黒ゼッケンで初完走を目指す一人だ!2人で前半戦の状況を話しながら眠気を飛ばしていった。しかし、脚が棒のように重い。山崎さんが低血糖じゃないか?とおっしゃるので、近くのコンビニで肉まんと豆乳を購入しエネルギー補給。その後、河川敷に出るも力が出ず。山崎さんのスピードについていけなくなった。この頃から大江戸113qのトップランナーに抜かれ始める。
絶対完走したい!時間はある!でも力は出ない!我慢のランが続く。ヘロヘロになりながら朝6時半ころ高島エイドに到着するも、開設準備中でチェックの機械も未搬送だった。ドリンクだけいただき久保田さんのいる施設エイドへと歩を進めた。もはや前半のスピードは出なくなっていた。
日差しがジリジリと暑くなり意識が朦朧としてきたころ、元気に声をあげている人がいた「大竹さーん」久保田さんの私設エイドだった。予定通りヘロヘロでの到着。久保田さんの笑顔で疲労が一瞬で吹き飛んだ!本当にありがたい。お団子とお菓子をいただき次のCPへ進んだ。ここから一気に元気を吹き返していった。
気が付くと秋ヶ瀬CPに到着。そこにはたっつあんが笑顔で迎え入れてくれた。スポーツエイドジャパンの大会で、いつも僕に力をくれる素晴らしい人!会うといつも笑いが絶えない。CPでは暖かいにゅう麺をいただき楽しい楽しい川越バイパスへ突入していく。

(9) 秋ヶ瀬〜川越 (189.9km)
川越バイパスは果てしなく地平線まで広がる直線路。多くのランナーは嫌がる道だが、僕は大好き。好きすぎてスキップしたくなるくらい。しかし、この道は途中で腰を掛ける縁石もコンビニもトイレも僅少。日陰も皆無。暑い日差しに体力を削られる。身体と対話しながら無理のないスピードで距離を稼いでいった。途中折り返しの黒ゼッケンの選手と挨拶を交わす。みんな川越にたどり着いておかわりをしているランナー。力強い走りに圧倒されながらも元気をいただいた。
バイパスが終わり市街地に入ると炭やの女将さんに遭遇。大江戸113q女子4連覇中の覇者だ。声を掛け合うもすごいスピードで駆けて行った。やはり実力が違いすぎる。
暑さで意識が朦朧としつつ、川越蓮馨寺に到着した。

(10) 川越〜秋ヶ瀬〜川越 (233q)
蓮馨寺では、夜間装備の防寒類を下ろし身軽にした。折り返しの目印として反射材付きの襷をかける。身体は既に満身創痍で、あちこち痛い。左足首の筋繊維は確実に断裂し像足のようになっていた。痛くて痛くて震える。でも、まだいける!ここからが黒ゼッケンの花道だ!これまで走ってきた自信と誇りを胸に秋ヶ瀬CPを目指した。
今通ってきた道の往復。ゴールに向かうすべてのランナーとすれ違う。僕からも精いっぱい声をかけた。「ナイスラン!あと〇キロがんばれ!」応援しながら自分にも力をいただいた。ここで浩太郎さんや三井田さん、島田順子さん、宮崎裕子さんとすれ違う。ウルトラのエリート達も満身創痍。ハイタッチでお互いを称えあう。大会でほんの数回しか会ってない人たちでもウルトラ仲間は何故か心が通じ合う気がした。
最後の秋ヶ瀬エイドに到着すると、たっつあんとの再開!お互いじゃれあい、はしゃぎあった。そして、最終14キロの旅路へいざ出陣。心は元気でも足取りは重たかったバイパスに出るまで数キロ歩き続けた。このまま歩いてもゴールできる時間にいたが、走るか歩くか悩みながら歩いていた。少しするとららぽーと富士見あたりで、予想外の応援をいただいた。重い足取りが急に軽くなる。こんな場所まで応援に来てくれた。本気で嬉しい!ありがとう以外の言葉が出てこない。
残りの力をすべて振り絞り、最後の直線迷いなく走り続けた。ゴールに近づくたびに元気が出てきた。そしてついに川越蓮馨寺に到着!走りながらゴールを切った!うれしい!

 タイム32時間35分37秒 18位/62人 完走率41.9%

・制限時間が厳しくタイムが求められるこの大会。前半の強風や大会が前倒しになったことでの夜間の冷え込みは厳しかった。完走できただけでも奇跡的だった。しかし、過酷だからこそ今年は走りこんで脚を作ってきた。でも、皆様の応援がなければ完走はあり得なかった。
本当に感謝しています。9回目の今年、首都圏で開催される超ウルトラの希少価値性とスタッフ・ボランティアの献身性から益々人気化。優先枠ですらクリック合戦で3分勝負に。来年は完走者しかつけることを許されない栄光の「白抜き黒ゼッケン」の名に恥じぬよう、精進してまいります。

コース
小江戸コース:蓮馨寺〜荒川〜押切橋〜重忠橋〜R140旧道〜玉淀大橋〜R254〜唐子 〜R254〜蓮馨寺
大江戸コース:蓮馨寺〜R254〜熊野町交差点〜環6〜都庁〜表参道〜六本木〜東京タワー〜皇居〜日本橋〜両国国技館〜スカイツリー〜浅草寺 〜赤羽〜高島平〜笹目橋〜荒川 〜羽根倉橋〜R254(バイパス)〜蓮馨寺〜秋ヶ瀬〜連携時
count: カウンター