その4年前、業界でも有名な遅筆のマンガ家を担当していた。
前夜からへばりついていた仕事場を出たのは明け方近く。睡眠3時間の日が続いていた。
締め切りをとっくに過ぎたとらの子の原稿を抱え、印刷屋へと急ぐタクシーの車中で、玉川上水の土手を走るジョガーを見た。
<自分とは全く違う一日の始まりがある>
「そういえば、中学時代はそこそこ速かったな」。田舎の中学では陸上部がなく、地区大会に”にわか部員”として長距離選手として選ばれていた。
子供のころの自慢できる思いがだれにも1つくらいはある。大人になって、忘れていたこと。自然と涙がにじんできた。 |
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「だれでもウルトラマラソンを走れる能力はあると思うんです。トップの選手も僕らも同じ人間。眠っている力をどれだけ引き出せるかなんでうよ」
今年も6月のサロマには、自分が参加する同好会「明走会」から32人が参加する。3分の2がウルトラ初挑戦。1年前、5−10キロしか走れなかったメンバーもいる。
ユニフォームの鮮やかな黄色にちなんで、「ひまわり大作戦」と名付け、走り込みなど1年かけて準備してきた。
初夏のサロマに大輪のヒマワリを咲かせるのが夢。全員が自分自身のゴールを目指して。 |