皇居周回路の1187、1188
もどる

 ヒガンバナ、マンジュシャゲ(彼岸花、曼珠沙華)      ヒガンバナ科

  年によって早い、晩いがありますが、9月15日から10月5日までの間で、1週間から10日間、花を咲かせます。 ヒガンバナの名の通り、秋の彼岸を代表する花です。
 皇居周回路では、桜田濠、半蔵濠が著名で、殊に桜田濠の皇居側の斜面では、多い年には、まるで緋毛氈を敷いたかと思わせるような、見事な光景が数日続きます。

 ヒガンバナは、史前帰化植物と位置づけられています。 山野に生えず、人里にだけ見られるのが帰化植物と判断される根拠のようで、日本に自生しているのは、何故か結実出来ない3倍体のため、鱗茎(球根)が分かれて増えるだけなので、繁殖には、人の手を介するか、洪水で運ばれるというケースが多く、田畑の畦とか、墓場に多いのは、根にある有毒成分の力で、作物や遺体が、害獣に荒されるのを防ごうとしたからであろうと考えられています。
 昨年(’00年)9月20日附日経新聞40面に、愛知大学の有薗(ありぞの)正一郎教授が、十数年来のご研究の一端として、ヒガンバナの渡来時期と経路とを考究された内容を簡略に記述されています。
 それによると、日本に渡来したのは、今からおよそ2500年前、縄文晩期に、水田耕作技術と共に伝わったもので、最も可能性の高い経路は、中国長江下流域から九州北部に渡来したのであろうとの説を樹てておられます。
 「毒がある」「墓場に咲く」ことから、1000もあるという異称の中には、不吉な名前がどっさり。 メクサリ、テクサレ、シタマガリ、シビレバナ、オヤコロシ、シビトバナ、ユウレイバナ、ハカバナ、ホトケバナ・・・
 花の印象では、テンガイバナ、カジバナ、センコバナ・・・ 生態からハミズハナミズ(花は葉を見ず、葉は花を見ず)、ハコボレ、ハカケグサ、ハヌケグサなど。
 
 毒がある球根も良く水に曝して、備荒食として蓄えたとか、変わったところで、太平洋戦争中、米大陸に飛ばした風船爆弾を貼り合わせた糊に、根から採った澱粉を使ったとか。

 ところで、周回路では、赤いマンジュシャゲに混じって、ところどころに、シロバナマンジュシャゲが見られます。 昨秋、この欄で、「ショウキズイセンとの交配種で、東京では、ここと、神代植物公園の水生植物園だけといわれる珍しい種類だそうで、皇居の方は献上品とのことです」とご紹介したのですが、昨年9月下旬、神宮外苑周回路(聖徳記念絵画舘周辺)で練習走をしたとき、ここかしこにシロバナがあるのを見つけて、びっくりしました。 そればかりではありません。
 献上品なら皇居周回路のこちら岸にある筈はないのに、三宅坂の眼下の斜面、少なくも3箇所で花が見られましたし、桜田門広場のベンチの背後にも、数輪咲いていました。
 ショウキズイセンは、種子で繁殖できる2倍体だそうですから、シロバナの中にも、種子で繁殖出来る種類があるのでしょうか、それとも草刈機に附着したシロバナの鱗茎などの断片が、こちらの岸での作業中に落ちたのでしょうか。

                            ’82年4月入会   佐々 幸夫(69
もどる